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※まだ半分くらいしか体験してませんが、会期が終わるまでにおすすめしときたいので、現段階での途中経過を簡単にレビューしときます。全部周ったあと、改めて完全版を公開する予定。

異国で暮らすことは寂しさの伴うものだ。だからこそ海外一人旅の良さもあるわけだが、本人たちの希望とは別に様々な経済的、政治的理由から日本で暮らしている外国人もまた、マイノリティであることの孤独を意識しないでいることは難しいだろう。

心理学で「地」と「図」という概念がある。ある事象が他の事象を背景として浮き上がって知覚されるとき、前者を「図」といい、その背景となっているものを「地」という。日本における外国人、特にアジア系の人々の生活は、この「地」のような存在だ。その生活のあり方が「図」となることはほとんどない。それはつまり、「ここにいるのにいないように扱われる」ということである。

port Bの新作「東京ヘテロトピア」は、その「地」の部分、この日本を構成しているにも関わらず背景のように意識的に知覚されることのない複数の点を繋ぎ合わせ、それを体験する観客の中に別の「図」を浮かび上がらせていく。

特に今回のツアーパフォーマンスで特徴的なのは、観客が足を運ぶことになる場所がレストランや居酒屋などが多いということだ。それぞれの場所で様々な地域の料理を食べることができるわけだが、それらは日本人の味に合わせているというより、その地域のオリジナルな味に近いものとなっている。もちろん、そこはそれぞれの地域から来た人々のコミュニティの場であるからということもあるが、決して閉じられた空間ではない。そこでは日本とは異なる文化体系があることを実感することができる。食材や香辛料、その組合せの違い。それらによって味覚を刺激することで、自分が所属する文化体系とは異なる体系がそこにあることを体験することができるし、ぶっちゃけ日本人向けにアレンジしたものよりも美味しいと感じる人も多いのではないだろうか。そういう意味でグルメな人にも今回のツアーパフォーマンスはオススメできる。

本作品は、FT13の主催プログラムだ。今回のFTのキーワードになるのは、「アジア」と「物語」。この「東京ヘテロトピア」はそのど真ん中を貫く作品と言えるだろう。また、これはツアーパフォーマンスの特徴といえるものだが、開演期間が終わってもその店や場所がなくなるわけではない。もし、期間が終わってもそこに足を運ぶ人がいるのなら、それは観客がこの作品を経験した前と後で変わったということなのではないだろうか。

ツアーパフォーマンスの機能は沢山あるが、そのひとつは、「人」「物」「金」、そしてそれに伴う「情報」が実際に動くということである。つまり、実社会の中に作品という回路を仕掛け、作品が終わった後もその回路の結果生まれた効果は持続するのだ。今回の作品は今までのport Bの作品の中でもその機能が強いものと言えるのではないだろうか。その理由として挙げられるのは、やはり「食」という人間の基盤を多く組み込んでいるからである。人間の根源的な欲求を作品の中に取り込んでいる。「地」となっている歴史や物語に覚醒するのは、食欲に導かれた異なる体系との出会いのその後でも良いのかもしれない。

(了)

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「東京ヘテロトピア」(port B)

スケジュール
11月9日(土)~ 12月8日(日)
休演日なし

*都内各所に点在する会場を自由に巡る形式の作品です。
*ご購入のチケットは、東京芸術劇場内1Fアトリウム特設F/Tインフォメーションにてツアーキット(ガイドブック・携帯ラジオ)にお引替えください。

お引替え期間:
11月9日(土)~ 12月8日(日)12:00〜19:00
(休館日:11月11日(月)・12日(火)は除く)
*お引替え後は会期中、何度でも自由に会場を訪れることができます。

http://www.festival-tokyo.jp/program/13/tokyo_heterotopia/

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