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南インドの西側、アラビア海に面するケーララ州。インドという国は、その多様さがものすごい場所なのですが、ここでもその一端を垣間見ることができます。言葉、文化、風習。そのすべてにおいて、固有な歴史を有しているわけですが、それは身体表現、舞踊に関してもいうことができます。ここではケーララ州・コーチンに古来より伝わる、伝統舞踊「カタカリ・ダンス」をご紹介。一度みたら忘れられなくなる舞踊です。

南インドの伝統舞踊「カタカリ・ダンス」とは?

カタカリ・ダンスは、インド4大舞踊のひとつ。また世界3大化粧劇のひとつでもあります。「カタ」とは「物語」を、「カリ」とは「舞踊」を表しています。世界最古の演劇といわれているクリヤッタムやクリシュナッタム、そして、カラリパヤットという武術の要素が加わって、西暦1500年頃に成立したといわれています。発声はありますが、基本的には、いわゆるセリフというものはありません。物語や登場人物の心情などは、舞踊と目の動きを中心とした顔の表情、そして、手の指先のかたちで表現されるのです。

役者たちの化粧と衣装もたいへん色鮮やか。特に、カエルのような緑色に顔を塗られた人物は、一度みたら忘れられなくなるほどのインパクトを放ち、カタカリ・ダンスのシンボル的な存在となっています。

まるで儀式のようなメイクアップの光景

カタカリ・ダンスの中心地・コーチンにはたくさんの劇場があり、ほとんど毎日、18時頃から公演が始まります。そして、本番の劇が始まる前にメイクアップの様子が公開されるのも見所のひとつ。このメイクアップはとても高度な技術を要するもので、一人前になるまでには最低2年くらいの修行時間が必要になるそう。また、化粧のための材料も、石などの天然素材を使った伝統的なものを使用しています。ある意味、このメイクアップの様子自体が劇のようでもあり、古来よりの歴史の連なりを感じ取ることができるでしょう。代々受け継がれてきた技能を目の当たりにできることには、感動すら覚えてしまいます。

メイクアップは登場人物だけでなく、使用される舞台にも施されていきます。伝統的な幾何学模様が描かれたり、ろうそくに火を灯したりと、舞台がゆっくりと作られていくのです。これ自体が、観客たちを物語の世界観に引き込んでいく儀式のように感じらるでしょう。

顔の表情や指先、音楽などの豊かな表現方法

カタカリ・ダンスは、歌舞伎とは異なって一切セリフがなく、舞踊や顔の表情、手の動きでそのすべてを表現していきます。それが大きな特徴となっているのですが、その表現の豊かさは思わず目を見張るレベル。顔の表情や指先のカタチくらいなら、私たち素人にも真似できるのではないかと思われるかもしれませんが、実際にやってみるととても難しいもの。メイクアップ同様、長期間の修行に支えられた表現方法なのです。

様々な手のカタチには、ハワイのフラダンスのように、それぞれ固有の意味を持ちます。また、舞台の後ろにいる音楽隊は、役者の動きに合わせて太鼓を叩いて、音の大きさやリズムで物語の進行を演出していきます。

おわりに

インド文化の奥深さを感じさせるケーララ州・コーチンでみることができる伝統舞踊「カタカリ・ダンス」。もしかしたら、日本の「歌舞伎」に似ているものを感じた人もいらっしゃるかもしれません。派手な化粧と衣装や顔の表情の豊かさ、そして、男性が女性を演じるところなど、多くの共通点も散見されます。それが偶然なのか必然なのかはよく分かりませんが、もしかしたら、同じ人類という共通点が作り出した既視感なのかもしれませんね。これは一度は見ておきたい舞踏です。英語での説明もありますよ。

掲載内容は執筆時点のものです。
2015/12/12 訪問

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