海外では日本ではちょっとありえないような建造物に出会うことも楽しみのひとつ。そして、東南アジア・ベトナムの避暑地として有名な高原都市・ダラットに、ちょっと変わった建物があるのを知っていますか?それは「クレイジーハウス」と呼ばれている建物。今回は、ロシアで建築を学んだとあるベトナム人女性によって建てられた、この一風変わった建築物の魅力をご紹介します。
複雑にして有機的な建築物「クレイジーハウス」
この「クレイジーハウス」は、ロシア・モスクワの大学で建築を学んだベトナム人女性が設計・建築したもの。1990年に着工して、2017年の現在でも建設が続いています。つまり、この建物はまた完成しておらず、いまだ建築中なのです。そのことから、「東洋のサグラダファミリア」とも言われていたりも。
1人50,000ドン(約250円)の入場料を窓口で支払って建物の敷地内に入ります。するとそこには、緑豊かで、それでいて奇妙ともいえる空間が広がっているのです。
多くの緑と自然に同居するように、不思議なかたちをした建造物が立ち並んでいます。その姿は複雑にして有機的。非直線的な形状が印象的です。この建築のデザインは、サグラダファミリアの建築家アントニ・ガウディやダラットの街を取り巻いている自然環境からインスピレーションをえたものなのだとか。
詳細な設計図のようなものはなく、絵を描いて、専門家ではない地元の職人を雇って、その絵を建物へと変換するという建築手法をとっているそう。このような手法やデザインには、自然を破壊するのではなく、自然に回帰すべきという思いが込められているとのことです。
ベトナムの建築家ダン・ヴィエト・ガーとは?
この不思議な建築物「クレイジーハウス」を造っているのは、ベトナムの建築家の女性ダン・ヴィエト・ガーさん。彼女は幼少期を中国と旧ソ連で過ごしています。1965年にはモスクワにある大学で建築学を修め卒業。また、元・共産党書記長のチュオン・チンの娘としても有名。お父さんは、あの「ドイモイ政策」(市場経済政策)を推し進めた人でもあります。
父親の死後、彼女はこの地に「クレイジーハウス」の建設を決意。ダラットの景観に合わないとなどの意見によって、取り壊されそうになったこともありますが、2007年、ベトナム当局より建築物としての許可を取得。そしていまもなお、作られ続けています。今では、外国からの観光客を中心に年間10万もの人びとが訪れる有名な観光スポットに。
テーマにもなっている自然との共存は、さまざまなオブジェによっても表現されています。森をイメージさせる外観の建物にハチのオブジェがあしらわれていたり。
と思えば、建物のなかに入ると、そこには海のなかのようなデザインの空間が広がっていたり。とにかく、「自然」のイメージが建物の至るところに散りばめられています。
まるで秘密基地を探索しているような楽しさがある
建物の内部は、まるで迷路のよう。細い通路によって移動できるようになっています。
まるで秘密基地にでもいるような雰囲気。そのなかを彷徨っていると、アトラクションのような楽しさがあります。
建物の頂上まで登れます。頂上からは、ダラットの街を一望することも。
それぞれのテーマを持つ部屋に宿泊できる
この「クレイジーハウス」は宿泊施設でもあります。ここに建っているさまざまな建物のなかには、いくつもの宿泊用の部屋が用意されているのです。
それぞれテーマが異なる客室を10室ほど。トラ、タカ、アリ、カンガルーなど、そのイメージに合わせた内装となっています。それぞれの部屋には個別に意味が持たされているのだとか。
この建物のコンセプトの面白さを体験するためには、宿泊するのが一番良いかもしれませんね。宿泊費のほうも、一泊40ドルくらいからと意外と安いのです。ただ、やはり人気があるので、早めに予約しておいたほうが無難。
まるで宝探しでもしているような気分に
そんなに広い敷地ではないのですが、通路がとても複雑なので、短時間でその隅々まで見て回るのはなかなか難しいところ。そんなときには、敷地内のカフェエリアで休憩することができます。
また、充実したお土産物コーナーも。ここではベトナムの民芸品の数々が集まられています。
いろいろのものが散りばめてあるので、それらをできるだけ多く探してみるのも楽しい。どんな意図があってそのような形にしているのか、考えてみるのも面白い。1人だけでなく何人かで訪れて、見学してみたあと、いろいろと意見交換してみるのも良い思い出になると思います。
建物を通じて作り手を対話できる
東南アジア・ベトナムの避暑地・ダラットにある、ちょっと不思議な建造物「クレイジーハウス」。最近では、ASEANへの旅行を促進するウェブサイトで「アジアの奇妙なホテル」にも選出されています。すみずみにまで込められたさまざまな意図や歴史に思い馳せてみると、それらの奇妙さが別の意味をおびてくるのを感じられることと思います。まるで設計した建築家と対話しているような、そんな気分になれるおすすめの観光スポットです。
掲載内容は執筆時点のものです。
2017/09/02 訪問
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